デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いとは?5つの比較軸と正しい選び方

 
 

この記事でわかること

  • デジタルマーケティングとWebマーケティングそれぞれの定義と特徴
  • 両者の関係性と混同されやすい3つの誤解
  • ファネル・チャネル・ツール・ターゲット・事業インパクトの5軸での違い
  • BtoB・BtoC別の判断基準と自社に適した手法の選び方
谷田 朋貴

監修者プロフィール

谷田 朋貴

一橋大学卒業後、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、Web専業広告代理店を経て、株式会社電通デジタルに入社。国内大手クライアントに対して、デジタル全体のプロモーション施策の戦略立案・実行に従事。また、生成AIを活用した自社業務の効率化にも取り組む。2023年12月、生成AIを活用した業務効率化支援、デジタルマーケティング支援を行う株式会社アドカルを創業。

「デジタルマーケティングとWebマーケティングは何が違うのか」という疑問を持つ方は少なくありません。両者は似た文脈で使われることが多く、明確な違いを説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。結論から言えば、Webマーケティングはデジタルマーケティングの一部であり、両者は包含関係にあります。

しかし、単に「範囲が違う」と理解するだけでは、実務で活かすことはできません。本記事では、ファネル・顧客接点・活用ツール・ターゲット・事業インパクトという5つの比較軸から両者の違いを具体的に解説します。さらに、BtoB・BtoCといった事業形態別の判断基準や、どのタイミングで施策を拡張すべきかについても触れていきます。自社に最適なマーケティング手法を選ぶための参考にしてください。


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デジタルマーケティングとは何か

デジタルマーケティングは、企業のマーケティング活動において欠かせない手法となっています。まずはその定義と、注目される理由について解説します。

デジタル技術を活用したマーケティング手法の総称

デジタルマーケティングとは、Webサイト・SNS・スマートフォンアプリ・メールなど、あらゆるデジタルチャネルを通じて顧客との接点を構築し、データを活用しながらマーケティング活動を行う手法の総称です。

単なるオンライン広告にとどまらず、顧客データの収集・分析から、購買後のフォローまで幅広い領域をカバーします。具体的には、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理)といったツールを駆使し、顧客一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを実現することが特徴です。

なぜ今デジタルマーケティングが注目されるのか

デジタルマーケティングが注目される背景には、消費者行動の大きな変化があります。スマートフォンやタブレットの普及により、消費者はいつでもどこでも情報収集や購買ができるようになりました。また、SNSの浸透によって口コミや第三者の評価が購買決定に強く影響するようになっています。こうした環境変化に対応するため、企業は複数のデジタルチャネルを横断的に活用し、顧客との接点を最大化する必要に迫られています。データに基づいた精度の高いマーケティングが求められる時代といえます。

Webマーケティングとは何か

Webマーケティングは、デジタルマーケティングの中でも特にWebサイトに焦点を当てた手法です。その定義と代表的な施策について解説します。

Webサイトを軸にした集客・販促活動

Webマーケティングとは、自社のWebサイトを中心に展開するマーケティング活動のことです。検索エンジンやWeb広告を通じてユーザーをサイトに誘導し、商品購入や問い合わせなどのコンバージョンを獲得することを主な目的としています。サイトに訪問したユーザーの行動データを分析し、ページの改善やコンテンツの最適化を行うことで、集客力とCVR(コンバージョン率)の向上を図ります。Webサイトという明確な「場」を軸にするため、施策の効果測定がしやすく、PDCAサイクルを回しやすいという特徴があります。

Webマーケティングの代表的な施策

Webマーケティングには、集客からコンバージョン獲得まで様々な施策があります。代表的なものは以下の通りです。

集客施策

  • SEO(検索エンジン最適化):検索結果で上位表示を目指す施策
  • リスティング広告:検索キーワードに連動して表示される広告
  • ディスプレイ広告:Webサイト上に表示されるバナー広告

コンバージョン改善施策

  • LPO(ランディングページ最適化):CVR向上のためのページ改善
  • コンテンツマーケティング:有益な情報発信による信頼構築

これらの施策を組み合わせることで、効率的な新規顧客獲得を実現します。

デジタルマーケティングとWebマーケティングの関係性と混同されやすいポイント

両者は似た文脈で使われることが多いため、混同されがちです。ここでは関係性を整理し、よくある誤解を解消します。

Webマーケティングはデジタルマーケティングの一部である

デジタルマーケティングとWebマーケティングの関係は、包含関係にあります。デジタルマーケティングという大きな概念の中に、Webマーケティングが含まれる構造です。WebマーケティングがWebサイトやメールを中心としたオンライン施策であるのに対し、デジタルマーケティングはアプリ・IoT・デジタルサイネージ・店舗のPOSデータなど、オンラインとオフラインを横断したあらゆるデジタルチャネルを網羅します。さらに、オフラインで取得したデータをデジタルで活用する取り組みも含まれます。つまり、Webマーケティングはデジタルマーケティングを構成する重要な要素の一つという位置づけです。

混同されやすい3つの誤解を解消する

両者を正しく理解するために、よくある3つの誤解を解消しましょう。

  • 誤解①「両者は同じ意味である」:概念の範囲が異なるため同義ではない
  • 誤解②「デジタルマーケティングは進化形である」:進化形ではなく、より広い概念である
  • 誤解③「Webマーケティングは古い手法である」:今も重要な施策であり基盤として機能する

両者は対立するものではなく、補完関係にあると理解することが大切です。

両者の違いをより具体的に理解するために、5つの比較軸から解説します。まずは全体像を表で確認しましょう。

比較軸Webマーケティングデジタルマーケティング
ファネル上部〜中部(認知・集客・購買)全体(購買後のフォローまで)
顧客接点Webサイト中心あらゆるデジタルチャネル
活用ツールCMSCMS・MA・SFA・CRM・CDP等
ターゲット新規顧客新規顧客+既存顧客
事業インパクトリード獲得・CVR向上ビジネスモデル変革まで

それぞれの軸について詳しく見ていきます。

ファネル(顧客の購買ステージ)での違い

Webマーケティングは、認知から購買、さらには再購入(リピート)までのオンライン上の行動を対象としています。一方、デジタルマーケティングは、製品利用データ(IoT)や店舗での体験なども含め、オンライン・オフラインを問わず顧客体験全体(カスタマーサクセス)を網羅します。LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指し、リピート購入や顧客ロイヤルティの向上まで視野に入れた取り組みを行います。

顧客接点(チャネル)での違い

Webマーケティングでは、検索エンジンやWeb広告から自社サイトへ誘導することが中心となります。顧客接点はWebサイトに集約されます。デジタルマーケティングでは、SNS・メール・アプリ・デジタルサイネージ・店舗でのデジタル施策など、あらゆるチャネルを活用します。オムニチャネル戦略のように、複数チャネルを連携させて一貫した顧客体験を提供する取り組みも含まれます。

活用ツールでの違い

両者では使用するツールの種類と範囲が大きく異なります。

Webマーケティングの主なツール

  • CMS(コンテンツ管理システム):WordPressなど
  • アクセス解析ツール:Google Analyticsなど
  • MA(マーケティングオートメーション):Web行動解析・メール自動化

デジタルマーケティングで追加されるツール

  • SFA(営業支援システム):商談管理
  • CRM(顧客関係管理):顧客情報の一元管理
  • CDP(カスタマーデータプラットフォーム):データ統合基盤

ターゲットでの違い

Webマーケティングの主なターゲットは新規顧客ですが、既存顧客への再訪促進も重要な役割です。検索エンジンや広告での新規獲得に加え、メールマガジンやリターゲティング広告を活用して既存顧客をWebサイトへ再誘導し、リピート購入やLTV(顧客生涯価値)の向上を図ります。

デジタルマーケティングでは、新規顧客に加えて既存顧客も重要なターゲットとなります。顧客育成やクロスセル・アップセルを通じて、既存顧客からの収益最大化を図ります。

事業へのインパクトでの違い

Webマーケティングの事業へのインパクトは、主にリード獲得数やコンバージョン率の向上といった指標で測られます。集客と顧客獲得が主な成果です。デジタルマーケティングでは、それに加えてビジネスモデルの変革まで影響を及ぼすことがあります。サブスクリプションモデルへの移行やデータを活用した新規事業創出など、DX(デジタルトランスフォーメーション)と密接に関わる領域まで拡大します。

自社に適したマーケティング手法の選び方

デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いを理解した上で、自社に最適な手法を選ぶための判断基準を解説します。

BtoB企業とBtoC企業で異なる判断基準

BtoB企業とBtoC企業では、適したマーケティング手法が異なります。BtoB企業は商談までの検討期間が長く、複数の意思決定者が関与するため、リードナーチャリングを含むデジタルマーケティングが効果的です。MAやCRMを活用した顧客育成により、長期的な関係構築を図れます。一方、BtoC企業では即時性のある購買行動が多いため、まずはWebマーケティングで集客基盤を固めることが重要です。ただし、リピート購入やLTV向上を目指す場合は、BtoC企業でもデジタルマーケティングへの拡張が有効となります。

Webマーケティングから始めるべきケース

以下のような状況では、まずWebマーケティングから着手することをおすすめします。

  • 自社サイトの集客力がまだ十分でない場合
  • マーケティング専任担当者が少ない場合
  • 予算やリソースが限られている場合

SEOやリスティング広告で集客基盤を構築し、コンバージョン獲得の仕組みを確立してから次のステップに進むのが効率的です。Webマーケティングで得たデータや知見が、将来のデジタルマーケティング戦略の土台となります。

デジタルマーケティングへ拡張すべきタイミング

Webマーケティングで一定の成果が出始めたら、デジタルマーケティングへの拡張を検討しましょう。具体的には以下のタイミングが目安です。

  • 新規顧客獲得が安定してきた段階
  • 既存顧客のリピート率向上が課題となった段階
  • 顧客データが蓄積されてきた段階

MAやCRMの導入により、顧客一人ひとりに最適化されたコミュニケーションが可能になります。段階的に施策を拡大することで、無理のない形でデジタルマーケティング体制を構築できます。

デジタルマーケティングとWebマーケティングは、包含関係にある概念です。Webマーケティングは自社サイトを軸とした集客・販促活動であり、デジタルマーケティングはそれを含むより広範な取り組みを指します。両者の違いは、対象とするファネルの範囲、顧客接点の数、活用ツール、ターゲット、事業へのインパクトという5つの軸で整理できます。自社に適した手法を選ぶには、事業形態や現在のフェーズ、リソースを踏まえた判断が重要です。まずはWebマーケティングで基盤を固め、段階的にデジタルマーケティングへ拡張していくアプローチが、多くの企業にとって現実的な選択肢となるでしょう。


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